”森・樹・林業”について -その2-
2023.1.26
「龍神材ブランド」への取り組み
あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願い申し上げます。
さて、こちらでは先日、丸太の市場で初市が開催されました。「マグロが初セリで何千万円で落札されました。」というニュースがありましたが、丸太にも市場があってセリが行われています。
和歌山県では3ケ所の市場でセリが行われていますが、そのうち2ケ所、龍神と田辺の初市の様子(約1分)です。
令和5年初市【龍神木材共販所】と【田辺木材共販所】 – YouTube
(他にも色々ありますので、よろしければそちらもご覧ください)
丸太の流通には様々な形態があって、一言で「流通はこんなになっています。」と言い切れるものではありませんが、ここ龍神村での流通のお話をさせてもらおうかと思います。
龍神村では古くから良質な杉や桧が生産されてきましたが、50年くらい前までは『伐採業者が、山主(森林所有者)から山にある立ったままの木を“この山いくら”で買い取り、伐り出しして、自分の取引先(製材所など)やよその地域にあった原木(丸太)市場で販売する。』というような形が一般的でした。
簡単に情報が手に入らなかった時代なので、山主はその先、自分の木がどのような評価がされて、どう使われているのか、ほとんど知ることはありませんでした。
それが「村ぐるみ林業」を標榜していた昭和40年代の龍神村で、活発に勉強会や情報交換が行われ「県内で製材されるだけでなく、どうやら龍神の木が、銘木で有名な吉野にも運ばれ、高値で取引されているらしい。」ということがわかってきました。
「それなら自分らの手で売ってみようやないか!」ということで、龍神村森林組合が運営する原木市場『龍神木材共販所』を開設し『龍神材』のブランド化に取り組みました。
簡単に書きましたが、山奥の田舎で新たに原木市場を開設して維持するには、大変な熱意と労力が必要だったと思います。「第1回から百何十回まで、うちも毎回出荷して協力していたんや。」と父から聞いたことがありますが、当時の村の山主さん達は「自分たちの市場だ!」という気持ちでこの市場を作り、育ててきたのでしょう。
いまは月二回、年間およそ3万㎥(1,000棟分)・4億円の丸太を扱い、県内の原木流通の拠点となっています。
原木市場の存在は単に流通だけでなく、他にも大きな意味がありました。気軽に話を聞くのが難しいような、製材所の社長さんや仕入れの担当者が、市の度に集まって来てくれるのです。私は20代でUターンしてから、市の度に覗きに来ていましたが、そこで見聞きしてきた事の数々が、いま組合長として必要な知識の土台になっているように感じています。
今回紹介したのは、流通の様々な形の一つで、時代によって流通方法も変わりつつあります。これからどう変わっていくのか分かりませんが、先人の思いや担ってきた役割を、山で育つ木と共に次の世代に引き継いでいけたらなと思っています。
機会があれば、どうぞ丸太の市場見学にお越しください。
今回はこれで失礼します。
著:龍神村森林組合 組合長 眞砂(まなご)